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2009/5/11 朝日新聞     社説  社会起業家


 もうけ第一、成長優先でやってきたひずみが社会のあちこちで出ている。しかし、それを是正すべき行政はお役所仕事で非効率的だし、杓子定規でかゆい所に手が届かない。
 そんな問題を解決しようと試みているのが、社会起業家とか社会的企業と呼ばれる存在である。福祉のような仕事を、企業らしい創意工夫や効率の良さで採算ベースに乗せるのが、社会起業家の新しい点だ。採算にのるから事業を広げやすく、サービスを受ける人も増える。
 もちろん、いきなり社会企業家になるのは難しい。夢や善意や忍耐だけでは務まらない。でも、ふつうに働きながら、少しは世の中に役に立つ。そんな生き方ができないものだろうか。
 サラリーマンが会社の周辺に社会貢献できる問題を見つけ、事業に取り組む。そこで大事なのは、問題を発見し、解決する能力だ。こうした力は、あらゆる職場で求められている。働きながらスキルを磨き、人脈を増やしてから、いずれ起業するのもいいだろう。
 若者の間には、競争に明け暮れる社会から逃れたいという意識もあるだろう。それでも、社会起業家の出現は社会の「復元力」の表れだと考えたい。彼らは日本が築き上げた豊かさの申し子なのだ。この新しい生き方・働き方が育つよう支援したい。
 そんな中、社会企業家が必ずと言っていいほど苦労するのが、行政の無理解だ。貧しい人を食い物にするような「貧困ビジネス」が増え、まともな社会的企業との区別が難しい事情もあるだろう。しかし、彼らを行政の縄張りを荒す侵入者と見る傾向が根強いからでもある。そうではなく、行政の手の届かない問題を効率よく解決するパートナーとして受け入れ、今ある制度や規制の問題点を洗い出し、改革する力を生かさなければならない。
 物質的には世界有数の豊かさを獲得した日本で、さまざまなシステムが制度疲労を起こしている。それを解決し次の経済社会の姿を見つけることが、本当の豊かさにつながるはずである。

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