2014 1/30(木) グローバル化と教育 -- 共生の道開ける人材を
安倍政権と文部科学省が、グローバル化を見すえた教育を念頭に、今年に入って次々と改革を打ち出している。
まず、教科書の検定基準などを改定した。また中学高校では、尖閣諸島について「領有権問題は存在しないことについて理解を深めさせる」と、領土問題への教科書の書き方や指導の指針を改めた。さらに、高校での日本史の必修化も検討している。あたかも、安倍政権への外交上の向かい風に立ち向かう盾として「国民の物語」を求めるかのようだ。
だが、近隣との口論に勝つ人材づくりがグローバル化教育の目標ではあるまい。相手が自国の主張ばかり教えているから我々も、と政府の維持の張り合いを持ち込むようでは教育の視界を狭める。必要なのは今の論点を俯瞰して思考することではないか。
たとえば、尖閣の領有権をめぐる我が国政府の見解は事実としてしっておくべきだろう。だが、「領有権問題は存在しない」と公理のように教えるよりも、領土と何か、なぜそれが国の摩擦をもたらすのか、考えさせる方が役立つ。
また、そもそも1989年に高校の指導要領を改訂した際に世界史を必修にしたのは、高校で学ばないと世界史をほとんど知らないまま大人になってしまうからだ。カリキュラムがきつい中で日本史を必修にしようとすれば、世界史を必修から外すことになりかねない。グローバル化対応のはずが世界史感覚のない人を増やしたのでは本末転倒だ。それよりも、世界史と日本史を融合させ、近現代史を中心に世界の中の日本を学ばせることを検討すべきではないか。
教育誌「教職研修」1月号に載った劇作家・平田オリザさんのインタビューは示唆に富む。日本が国を開くにあたって大切なのは、「わかりあえないということを出発点とする」ことだ、と指摘する。異なる国であれ民族であれ、分かり合えない者同士が共通点を見つけ、互いを高め合う共生の道を切り開く知恵を備えた人材こそを育みたい。
安倍政権と文部科学省が、グローバル化を見すえた教育を念頭に、今年に入って次々と改革を打ち出している。
まず、教科書の検定基準などを改定した。また中学高校では、尖閣諸島について「領有権問題は存在しないことについて理解を深めさせる」と、領土問題への教科書の書き方や指導の指針を改めた。さらに、高校での日本史の必修化も検討している。あたかも、安倍政権への外交上の向かい風に立ち向かう盾として「国民の物語」を求めるかのようだ。
だが、近隣との口論に勝つ人材づくりがグローバル化教育の目標ではあるまい。相手が自国の主張ばかり教えているから我々も、と政府の維持の張り合いを持ち込むようでは教育の視界を狭める。必要なのは今の論点を俯瞰して思考することではないか。
たとえば、尖閣の領有権をめぐる我が国政府の見解は事実としてしっておくべきだろう。だが、「領有権問題は存在しない」と公理のように教えるよりも、領土と何か、なぜそれが国の摩擦をもたらすのか、考えさせる方が役立つ。
また、そもそも1989年に高校の指導要領を改訂した際に世界史を必修にしたのは、高校で学ばないと世界史をほとんど知らないまま大人になってしまうからだ。カリキュラムがきつい中で日本史を必修にしようとすれば、世界史を必修から外すことになりかねない。グローバル化対応のはずが世界史感覚のない人を増やしたのでは本末転倒だ。それよりも、世界史と日本史を融合させ、近現代史を中心に世界の中の日本を学ばせることを検討すべきではないか。
教育誌「教職研修」1月号に載った劇作家・平田オリザさんのインタビューは示唆に富む。日本が国を開くにあたって大切なのは、「わかりあえないということを出発点とする」ことだ、と指摘する。異なる国であれ民族であれ、分かり合えない者同士が共通点を見つけ、互いを高め合う共生の道を切り開く知恵を備えた人材こそを育みたい。