2008/10/31 朝日新聞 社説 衆院解散・総選挙
麻生首相は新たな経済対策を発表した記者会見で、金融危機や景気後退への対策を最優先すると表明し、総選挙が先送りされることになった。
首相は内閣発足当初から解散を思い描いていたのだろう。だが、内閣支持率が思うように上がらず、米国発の金融危機が深刻な影響を広げ、株価はバブル崩壊後の最安値を更新し、円も急騰した。原油高対策などを盛り込んだ補正予算を成立させた後に、ともくろんだ次の解散のシナリオも、吹き飛んでしまった。
総選挙の先送りで、今後の国会の儒教は再び困難なものになりそうだ。民主党が徹底抗戦に舵を切り、衆院では再可決しなければ法案が何一つ通らなくなる。何のことはない、福田政権時代への逆戻りである。
首相が「政局よりも政策」と力むのもわからなくないが、肝心の政策の方も混迷を深めている。新たな対策にはできるだけ早く実行しなければならない課題が盛り込まれているが、景気浮揚効果に疑問符のつく「定額給付金」は、選挙向けのバラマキといわれても仕方ない。「3年後には消費税の引き上げをお願いしたい」と恐れずに負担増を語ったのは歓迎だが、与党内の決着は年末の税制議論に先送りされた。
この難局を首相が本気で打開しようとするなら、結局は原点に戻って早期の総選挙で信を問い、政治に力強さを取り戻すしかあるまい。選挙への思惑を絡めた短期的な対策で貴重な財源を使い果たすのは愚策である。
長期的なビジョンに基づく大胆な内需拡大策を描き、実行していく体制を作ることが今求められている。そのためにも首相は年末か年明けまでに解散を決断すべきである。補正予算にしても与野党で話し合い、早急に実施すべき研究経済対策と、主張に隔たりのある対策に仕分けし、前者の実現を急ぐ。後者についてはそれぞれのマニフェストに掲げ、総選挙で競い合うのだ。民主党はそのために協力すべきで、これが危機克服の近道である。
麻生首相は新たな経済対策を発表した記者会見で、金融危機や景気後退への対策を最優先すると表明し、総選挙が先送りされることになった。
首相は内閣発足当初から解散を思い描いていたのだろう。だが、内閣支持率が思うように上がらず、米国発の金融危機が深刻な影響を広げ、株価はバブル崩壊後の最安値を更新し、円も急騰した。原油高対策などを盛り込んだ補正予算を成立させた後に、ともくろんだ次の解散のシナリオも、吹き飛んでしまった。
総選挙の先送りで、今後の国会の儒教は再び困難なものになりそうだ。民主党が徹底抗戦に舵を切り、衆院では再可決しなければ法案が何一つ通らなくなる。何のことはない、福田政権時代への逆戻りである。
首相が「政局よりも政策」と力むのもわからなくないが、肝心の政策の方も混迷を深めている。新たな対策にはできるだけ早く実行しなければならない課題が盛り込まれているが、景気浮揚効果に疑問符のつく「定額給付金」は、選挙向けのバラマキといわれても仕方ない。「3年後には消費税の引き上げをお願いしたい」と恐れずに負担増を語ったのは歓迎だが、与党内の決着は年末の税制議論に先送りされた。
この難局を首相が本気で打開しようとするなら、結局は原点に戻って早期の総選挙で信を問い、政治に力強さを取り戻すしかあるまい。選挙への思惑を絡めた短期的な対策で貴重な財源を使い果たすのは愚策である。
長期的なビジョンに基づく大胆な内需拡大策を描き、実行していく体制を作ることが今求められている。そのためにも首相は年末か年明けまでに解散を決断すべきである。補正予算にしても与野党で話し合い、早急に実施すべき研究経済対策と、主張に隔たりのある対策に仕分けし、前者の実現を急ぐ。後者についてはそれぞれのマニフェストに掲げ、総選挙で競い合うのだ。民主党はそのために協力すべきで、これが危機克服の近道である。